movie

『地獄の英雄』(1951年)

"Ace in the Hole" 監督ビリー・ワイルダー。 タブロイド・ジャーナリズムやメディア・サーカスを題材としながら、主人公とファム・ファタルの描写および陰影の効いた映像においてまぎれもなくフィルム・ノワールの刻印を持つ映画。その扇情的なジャーナリズ…

『ジャズ・シンガー』(1927年)

"The Jazz Singer" 監督アラン・クロスランド。 サイレントとトーキーを橋渡しするヴァイタフォンの代表的映画だが、その技術的ぎこちなさ、二つの違うシステムがむりやりひとつにまとめ上げられている点がかえって魅力的といえるかもしれない。後半あらわれ…

『君去りし後』(1944年)

"Since You Went Away" 監督ジョン・クロムウェル。 第二次大戦中に出征した夫ティムを待つ妻アン(クローデット・コルベール)とその二人の娘ジェイン(ジェニファー・ジョーンズ)とブリッグ(シャーリー・テンプル)を中心に描くメロドラマ。3時間近い大…

『影なき男』(1934年)

"The Thin Man" 監督W・S・ヴァン・ダイク二世。 ウィリアム・パウエルとマーナ・ロイが探偵夫婦を演じているのだが、一方で後のフィルム・ノワールを予見しつつ、他方でスクリューボールコメディにもなっていてジャンル的に区分のしづらい映画だ。原作者…

『ハーヴェイ』(1950年)

"Harvey" 監督ヘンリー・コスター。 ジェームズ・スチュワートが、身長2メートルの他の人には見えないウサギ「ハーヴィ」を友人とする男を演じるコメディ。 戦後から40年代末にかけて精神科を舞台とした映画がいくつも作られたが(『白い恐怖』(ヒッチコッ…

『砂塵』(1939年)

"Destry Rides Again" 監督ジョージ・マーシャル。 面白い。 よく言われることだが、1939年というのはハリウッド映画史上異常な年で、『風と共に去りぬ』と『駅馬車』という記念碑的な作品が公開されただけでなく、佳作レヴェルの作品を挙げても、『スミス都…

『ジェーン・エア』(1944年)

"Jane Eyre" 監督ロバート・スティーヴンソン。 この映画でオーソン・ウェルズはどの程度演出の部分に関わっているんだろう、と思わずにはいられなかった。ジェーン・エア役のジョーン・フォンテインとロチェスター役のウェルズは別にしても、撮影がジョージ…

『飾り窓の女』(1944年)

"The Woman in the Window" 監督フリッツ・ラング。 プレミンジャーの『ローラ』と同時期に公開され、『ローラ』と同様に、絵画に描かれた美女が本当に現れるという場面がキーとなるノワール。以下ネタバレを含む。 この映画のいわゆる「夢落ち」に関しては…

『恋のページェント』(1934年)

"The Scarlet Empress" 監督ジョセフ・フォン・スタンバーグ。 スタンバーグがマレーネ・ディートリッヒと組んで作った歴史劇。プロシアの貴族の娘ゾフィー(ディートリッヒ)がロシアの皇太子ピョートル(サム・ジャッフェ)に嫁ぎ、女帝エリザヴェータと頭…

『ブレージングサドル』(1974年)

"Blazing Saddles" 監督メル・ブルックス。 いいなぁ、この風刺。 政治家の策略により黒人が西部の小さな街の保安官として送り込まれるが、最後は町の住民と黒人が結束して政治家たちを打ち倒すという物語枠組みの西部劇コメディ。悪い支配者から新任の保安…

『歩道の終わる所』(1950年)

"Where the Sidewalk Ends" 監督オットー・プレミンジャー。 プレミンジャーが『ローラ殺人事件』(1944年)のデイナ・アンドリューズとジーン・ティアニーと再び組んだフィルム・ノワール。 ニューヨーク。アンドリューズ演じる粗暴な警官マーク・ディクソ…

『出獄』(1948年)

"Call Northside 777" 監督ヘンリー・ハサウェイ。 実際に起きた事件に基づいた「ドキュノワール」。ジェームズ・スチュワートが、シカゴで11年前(1932年)に起きた警官殺し事件で容疑を掛けられ収監されたポーランド系移民フランク・ウィチェック(リチャ…

『苦い報酬』(1948年)

"Force of Evil" 監督エイブラハム・ポロンスキー。 ケインとアベルのような対照的な兄と弟の対立関係を中心としたフィルム・ノワール。 ウォール街。物語は独立記念日の前日から始まる。独立記念日の日に数当て賭博の番号を不正に操作して(1776年のアメリ…

『四十二番街』(1933年)

"42nd Street" 監督ロイド・ベーコン。 33年に振付師/舞台監督(?)バズビー・バークリーが関わったバックステージ物のひとつ。この映画が三月公開で、五月公開の『ゴールド・ディガーズ』では、ジンジャー・ロジャース、ディック・パウエル、ルビー・キー…

"The Long, Long Trailer" (1954)

監督ヴィンセント・ミネリ。 テレビ番組『アイ・ラブ・ルーシー』の人気カップルで実際に夫婦であったルシル・ボールとデジ・アーナズが新婚カップルを演じるコメディ。妻のわがままでトレイラーハウスを買ってカリフォルニアからコロラドまでハネムーンに出…

『街の野獣』(1950年)

"Night and the City" 監督ジュールズ・ダッシン。 非米活動委員会の追及を逃れてイギリスに逃れたダッシンが、ハリウッド資本で撮ったロンドンを舞台としたフィルム・ノワール。プロレス興行で一攫千金を狙うアンチヒーロー、ハリー・ファビアン(リチャー…

『ゴールド・ディガーズ』(1933年)

"Gold Diggers of 1933" 監督マーヴィン・ルロイ。 『四十二番街』と同年に振付師バスビー・バークリーが関わったバックステージもののミュージカル。たくさんの人間を幾何学的に動かしていく演出のヴァリエーションの多様さ、そのアイディアの豊富さには驚か…

『極楽特急』(1932年)

"Trouble in Paradise" 監督エルンスト・ルビッチ。 プロダクション・コード発効以前の作品で、発効以後は、犯罪者が罰せられないまま逃げおおせてしまうという展開と快楽主義的な傾向(それは"I like to take my fun and leave it"というセリフに要約される)…

『果てしなき航路』(1940年)

"The Long Voyage Home" 監督ジョン・フォード。 一時は船乗りだったユージン・オニールのいくつかの初期戯曲を組み合わせて映画化。カリブ海からヨーロッパへTNT爆弾を運ぶことになった船での多国籍の船員たちを描くというのが映画の大枠だけど、ここでの主…

『剃刀の刃』(1946年)

"Razor's Edge" 監督エドマンド・グールディング なんか変な映画だ。ジーン・ティアニー、タイロン・パワー、クリフトン・ウェッブ、アン・バクスター、ハーバート・マーシャルとやたらと豪華なキャストで、ティアニーとウェッブの演技は素晴らしいし、バク…

『決断の3時10分』(1957年)

"3:10 to Yuma" 監督デルマー・デイヴィス。 アリゾナ州。強盗団のボス(グレン・フォード)と、彼をユマ行き3時10分発の汽車に乗せるため護送に協力する貧乏牧場主(ヴァン・ヘフリン)。 男たちが吸うタバコ→フォードとヘフリンのあいだで何度も手渡される…

『深夜復讐便』(1949年)

"Thieves' Highway" 監督ジュールズ・ダッシン。 この映画好きだなぁ。 長距離トラック運転手を描き方がラオール・ウォルシュの"They Drive by Night" (1940)に似ていると思ったら、両方ともA.I.ベゼリデスの小説を基にしていた(この映画では脚本も担当)。…

『裸の拍車』(1953年)

"The Naked Spur" 監督アンソニー・マン。 南北戦争後の西部。一人の賞金首(ロバート・ライアン)とそれに付き添う女(ジャネット・リー)と彼をカンザスまで連れて行く三人の男(ジェームズ・スチュワートetc.)。賞金$5000のために三人の男は結束しつつお…

『ミッドナイトクロス』(1981年)

"Blow Out" 監督ブライアン・デ・パルマ。 不思議な映画だ。ジョン・トラヴォルタ演じる音声効果技師が、事件を解明する決定的な証拠となるマスターテープを自分のアパートメントの屋根裏に隠す場面がある。カメラがこの様子を窓の外から覗き見るかのように…

"Whirlpool"(1949年)

監督オットー・プレミンジャー。 『ローラ殺人事件』(1944年)に続いてプレミンジャーとジーン・ティアニーが組んだ作品(この映画でも『ローラ』を思わせる肖像画とティアニーのショットがある)。『白い恐怖』(ヒッチコック、45年)、"Shock"(アルフレ…

『血だらけの惨劇』(1964年)

"Strait-Jacket" 監督ウィリアム・キャッスル。 『何がジェーンに起こったか?』(62年)での姉妹の関係を母娘関係へと移し変えて、頭のおかしい(ようにみえる)母親をジョーン・クロフォード、娘をダイアン・ベイカーが演じる。 ルーシー(クロフォード)…

『カンバセーション…盗聴…』(1973年)

"The Conversation" 監督フランシス・フォード・コッポラ アントニオーニの『欲望』(1966年)の写真を音声に置き換えつつ、何もない空間が不気味な有意味性を帯びるというモチーフをコッポラなりに展開。ジーン・ハックマンの演じる盗聴屋の名前"Caul"(胎…

『青いガーディニア』(1953年)

"Blue Gardenia" 監督フリッツ・ラング。 電話交換手として働いているノラ(アン・バクスター)は誕生日の日に、朝鮮戦争に派遣されている婚約者から別れの手紙を受け取る。悲しみにくれるノラは、画家のハリー(レイモンド・バー)から同じ電話交換手でルー…

『若き日のリンカーン』(1939年)

"Young Mr. Lincoln" 監督ジョン・フォード とにかくこの映画の美しさには見とれてしまう。アメリカ映画が神話性を獲得することを如実に示す一例だと思う。南北戦争前を舞台としたこの映画、そして同年に公開された独立戦争を扱った『モホークの太鼓』と南北…

"Pinky" (1949)

監督エリア・カザン いわゆるpassingの問題を扱った映画のひとつ。肌の白い黒人のピンキー(ジーン・クレイン)は、北部で看護婦免許を得た後、南部に住んでいる黒人の祖母(エセル・ウォーターズ)のところに戻ってくる。北部ではピンキーは白人として通っ…