2006-01-01から1年間の記事一覧

『裸の拍車』(1953年)

"The Naked Spur" 監督アンソニー・マン。 南北戦争後の西部。一人の賞金首(ロバート・ライアン)とそれに付き添う女(ジャネット・リー)と彼をカンザスまで連れて行く三人の男(ジェームズ・スチュワートetc.)。賞金$5000のために三人の男は結束しつつお…

『ミッドナイトクロス』(1981年)

"Blow Out" 監督ブライアン・デ・パルマ。 不思議な映画だ。ジョン・トラヴォルタ演じる音声効果技師が、事件を解明する決定的な証拠となるマスターテープを自分のアパートメントの屋根裏に隠す場面がある。カメラがこの様子を窓の外から覗き見るかのように…

"Whirlpool"(1949年)

監督オットー・プレミンジャー。 『ローラ殺人事件』(1944年)に続いてプレミンジャーとジーン・ティアニーが組んだ作品(この映画でも『ローラ』を思わせる肖像画とティアニーのショットがある)。『白い恐怖』(ヒッチコック、45年)、"Shock"(アルフレ…

『血だらけの惨劇』(1964年)

"Strait-Jacket" 監督ウィリアム・キャッスル。 『何がジェーンに起こったか?』(62年)での姉妹の関係を母娘関係へと移し変えて、頭のおかしい(ようにみえる)母親をジョーン・クロフォード、娘をダイアン・ベイカーが演じる。 ルーシー(クロフォード)…

『カンバセーション…盗聴…』(1973年)

"The Conversation" 監督フランシス・フォード・コッポラ アントニオーニの『欲望』(1966年)の写真を音声に置き換えつつ、何もない空間が不気味な有意味性を帯びるというモチーフをコッポラなりに展開。ジーン・ハックマンの演じる盗聴屋の名前"Caul"(胎…

『青いガーディニア』(1953年)

"Blue Gardenia" 監督フリッツ・ラング。 電話交換手として働いているノラ(アン・バクスター)は誕生日の日に、朝鮮戦争に派遣されている婚約者から別れの手紙を受け取る。悲しみにくれるノラは、画家のハリー(レイモンド・バー)から同じ電話交換手でルー…

『若き日のリンカーン』(1939年)

"Young Mr. Lincoln" 監督ジョン・フォード とにかくこの映画の美しさには見とれてしまう。アメリカ映画が神話性を獲得することを如実に示す一例だと思う。南北戦争前を舞台としたこの映画、そして同年に公開された独立戦争を扱った『モホークの太鼓』と南北…

"Pinky" (1949)

監督エリア・カザン いわゆるpassingの問題を扱った映画のひとつ。肌の白い黒人のピンキー(ジーン・クレイン)は、北部で看護婦免許を得た後、南部に住んでいる黒人の祖母(エセル・ウォーターズ)のところに戻ってくる。北部ではピンキーは白人として通っ…

"Shock"(1946年)

監督アルフレッド・L・ワーカー ヒッチコックの『白い恐怖』(1945年)とアナトール・リトヴァクの『蛇の穴』(1948年)の間の時期に作られた精神病院を舞台としたスリラー。 ジャネット(アナベル・ショー)は、サン・フランシスコのホテルで戦争から帰っ…

『その女を殺せ』(1952年)

"The Narrow Margin" 監督リチャード・フライシャー。 殺されたギャングの妻(メアリー・ウィンザー)を裁判の証言者としてシカゴからロサンジェルスまで護送する刑事(チャールズ・マグロー)の話(70年の『カナディアン・エクスプレス』はこのリメイク)。…

『無法者の群』(1939年)

"Dodge City" 監督マイケル・カーティス。 『駅馬車』と『風と共に去りぬ』と同じ年に公開されたテクニカラーの西部劇。南北戦争直後の1866年、カンザス州のドッジ・シティに汽車が通る年を起点として、その六年後の72年に街に戻ってきたカウボーイ、ウェイ…

『偽りの花園』(1941年)

"The Little Foxes" 監督ウィリアム・ワイラー。 とにかく冷え冷えとした映画だ。リリアン・ヘルマンの脚本は容赦なく冷徹な眼差しに貫かれているし、グレッグ・トーランドのパン・フォーカスのカメラはまるで標本のように対象との距離感を露にする。そして…

『ふるえて眠れ』(1964年)

"Hush...Hush, Sweet Charlotte" 監督ロバート・アルドリッチ。 1927年と1964年のルイジアナを舞台にして『何がジェーンに起こったか?』の姉妹編として企画された作品で、ベティ・デイヴィスの相手役はジョーン・クロフォードからオリヴィア・デ・ハヴィラ…

『何がジェーンに起ったか?』(1962年)

"What Ever Happened to Baby Jane?" 監督ロバート・アルドリッチ。 1917年。1935年。そして1962年。ハリウッド黄金時代の大女優ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードにこんな役をやらせてしまうとは、アルドリッチという人はなんと意地悪で痛快なこ…

『ハイ・シエラ』(1941年)

"High Sierra" 監督ラオール・ウォルシュ。 前年の"They Drive by Night"に引き続き、ウォルシュ、ハンフリー・ボガート、アイダ・ルピノの組み合わせで作られ、ボギーがはじめて主役を張った映画。同年の『マルタの鷹』とあわせてボギーはこれ以降大スター…

『暴力団』(1955年)

"The Big Combo" 監督ジョセフ・H・ルイス。 ギャング団のボス・ブラウン(リチャード・コンテ)とその愛人スーザン(ジーン・ウォレス)、スーザンに職権以上に執着する刑事ダイヤモンド(コーネル・ワイルド)。ここではなにもかもがミニマルかつ過剰だ。…

『Gメン対間諜』(1945年)

"The House on 92nd Street" 監督ヘンリー・ハサウェイ。 ドキュメンタリー調のフィルムノワール、いわゆる「ドキュノワール」のはしりと言われる作品。41年の真珠湾攻撃の前後の時期を舞台として、米国の軍事機密をめぐるドイツとFBIの駆け引きが焦点と…

『ショック集団』(1963年)

"Shock Corridor" 監督サミュエル・フラー。 精神病院の様子の描き方がアナトール・リトヴァクの『蛇の穴』(1948年)に似ている。恐らくフラーは参考にしたのだろうと思うけれども、違うのは、主人公を女性から男性に代えていること、そしてなによりも、『…

『復讐は俺に任せろ』(1953年)

"The Big Heat" 監督フリッツ・ラング。 殺人事件の捜査をしていた刑事が、事件の核心に迫りすぎたために妻を殺され、停職の身になりながらも事件を解決するという話。50年代のノワールらしく、犯罪の起こる領域が家庭領域に侵犯していくのが興味深い。妻が…

『暗黒の恐怖』(1950年)

"Panic in the Streets" 監督エリア・カザン。 ニューオリンズの衛生局医師リチャード・ウィドマークと刑事ポール・ダグラスが対立しながらも、殺害された肺ペスト患者の殺人犯ジャック・パランスを探すというノワール調の映画。より大きな仕事を夢見て平凡…

"The Women"(1939年)

監督ジョージ・キューカー。 1937年初演の舞台を映画化。結婚をめぐるスクリューボールコメディだけど、同ジャンルの他のものと違うのは、登場人物がすべて女性ということだ。話が展開するのが主に女性同士のダイアローグによってで、男は電話の向こう側か、…

『黒蘭の女』(1938年)

"Jezebel" 監督ウィリアム・ワイラー。 1850年代初めのニューオリンズを舞台とした『風と共に去りぬ』(39年)に近い「南部もの」メロドラマ。ベティ・デイヴィスは『風と〜』のスカーレット役の代わりにこの役を与えられたそうだが、冒頭で彼女が馬にのって…

『美しき冒険旅行』(1971年)

"Walkabout" 監督ニコラス・ローグ。 前にこの映画をみたことがあるかもしれない、そう思ったのは、砂漠をさまよう女の子とその弟が、アボリジニの少年に遭遇してすぐ後の場面、アボリジニの少年の股間のショットに続き、女の子がアボリジニの少年と一緒に木…

『東京暗黒街・竹の街』(1955年)

"House of Bamboo" 監督サミュエル・フラー。 『情無用の街』(48年)のリメイクだが、画面はフルカラーのシネスコになって、舞台を東京に移し、ドキュメンタリー調の部分はなくなって、そのかわり潜入捜査員(ロバート・スタック)と殺されたアメリカ人の日…

『情無用の街』(1948年)

"The Street with No Name" 監督ウィリアム・キーリー。 セミ・ドキュメンタリー・スタイルの犯罪映画。「センター・シティ」なる架空の街で、覆面のギャングによる強盗殺人事件が連続しておこり、事件究明のため、FBI捜査官のジーン・コーデル(マーク・ス…

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『四十挺の拳銃』(1957)

"Forty Guns" 監督サミュエル・フラー。 19世紀末。ガンマンのグリフ・ボネル(バリー・サリヴァン)は、二人の兄弟とともに、アリゾナ州のとある町にやってくる。そこでは、ジェシカ・ドラモンドという女牧場主(バーバラ・スタンウィック)が40人のガンマ…

『蛇の穴』(1948年)

"The Snake Pit" 監督アナトール・リトヴァク。 Mary Jane Wardの小説を映画化。オリヴィア・デ・ハヴィランドが演じる精神病患者が治癒するまでを、精神病院の様子を織り交ぜつつ描く。リトヴァクの演出が冴えてる。ハヴィランドの演技もすばらしい。 精神…

『ヒッチコック劇場』第一シーズン(1955-56)、1話〜14話

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『拾った女』(1953年)

"Pickup on South Street" 監督サミュエル・フラー。 冒頭。満員電車の中。汗ばんで放心した顔の妙にエロティックなジーン・ピータースと彼女を見る二人の男。途中で乗り込んできたリチャード・ウィドマークがピータースに近づく。いったいなにが起こってい…